いぼ(尋常性疣贅)

Warts

症状

いぼとは、皮膚の一部が盛り上がった小さなできものです。「いぼ」にはウイルス性疣贅(ゆうぜい)、高齢者に多い脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)、首や脇のしたなどにできる軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)という柔らかいできもの、乳幼児に多い水いぼ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)などがあります。このうち、多くはウイルス性疣贅であり、皮膚や粘膜にできます。
疣贅の中でも多いタイプをまとめて「尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)」、そうでないものは「特殊型」と呼ばれています。 魚の目やタコに似ていますが、通常は、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。最も多くみられるのは手や足の指で、通常は数mm~1cm程度の小さな皮膚の盛り上がりができます。1つだけポツンとできることもありますが、多発することもあり、集まって融合し、面になることもあります。

原因

原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスの感染です。HPVには多くの種類(型)があり、型の違いでよくできる部位やいぼの形状に違いがありますが、一般的ないぼ(尋常性疣贅)の原因となるのは、主にHPV2型です。HPVは皮膚にできた小さなキズから入り込み、3~6ヶ月を経て、いぼをつくります。子どもに多くみられ、キズがつきやすい手足や、アトピー性皮膚炎の子どもの場合では、引っ掻くことが多いひじやわきの下などにもよくできます。HPVは小さな傷から感染し、感染すると症状がない状態で長い間にわたって潜伏すると考えられています(潜伏持続感染)。その後、HPVが増えると皮膚の表面に疣贅としてでてきます。皮膚の角質が落ちるとそのなかのHPVがまたほかの傷から侵入し、感染することで疣贅の数は徐々に増えていきます。 疣贅は一つ一つが大きくなり、多発すると融合してくっ付いていきます。HPVはひとからひとへうつることが主な感染症であり、銭湯やジム、プールといった公共施設で間接的にうつることもあります。なお、いぼはいぼでも、「みずいぼ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)」は、原因となるウイルスも症状も異なる別の病気で、治療法も異なります。

注意点

いぼを触った手で別の部位(特に皮膚が荒れていたり、キズがある部位)を触ったりすることで感染が広がるため、むやみに触らないようにしましょう。 感染力は強くないため、プールやお風呂などを控える必要はありません。

治療方法

液体窒素を用いた冷凍凝固療法

イボといっても、イボの種類・大きさや数・通院できる頻度・年齢など、どの治療が適しているかは患者さまごとに異なります。当院では、イボの治療を開始する際に、患者さまごとに適した治療法を検討・提案しています。 
ここからは、イボに対する代表的な治療法について解説します。

冷凍凝固療法はマイナス196℃の液体窒素をイボに当てて凍結させる方法です。尋常性疣贅や脂漏性角化症などのイボに対する治療法として最も一般的で、保険も適用されている治療法です。治療自体が簡単で何度でも繰り返せるということもあり、広く用いられています。液体窒素を患部に当てる際には、綿棒を使う方法、スプレーで当てる方法、鑷子(せっし)(ピンセット)でつまむ方法などがあります。

冷凍凝固療法:綿棒
実際には、綿棒を使うのが最も一般的です。メリットは、ピンポイントに小さなイボを狙って治療できることです。イボが大きい場合は綿棒の先端にさらに綿を巻きつけて補強したものを使うこともできます。綿棒を使えばどんな大きさのイボでも治療することが可能です。デメリットは処置時の痛みが強いことです。治療後も患部には数日ほど軽い痛みや腫れが続くことがありますし、大きな水ぶくれや血豆ができ、皮膚に色素沈着を起こすこともあります。

冷凍凝固療法:液体窒素スプレー
液体窒素をスプレーで当てる方法もあります。スプレーだとピンポイントで当てる範囲や強さを調整しづらいというデメリットがありますが、痛みが少なくお子さまでも続けやすいというメリットがあります。

冷凍凝固療法:鑷子(せっし)
ピンセット 有茎性のイボの場合には、鑷子を使う方法も有効です。この方法では、液体窒素につけて冷やした鑷子でイボの茎の部分をつまみ冷却します。これによって病変を根元から効率よく取り除くことができます。

冷凍凝固療法について
凍結によってイボの組織が壊死すると、数日でその部分が水疱化してから徐々にかさぶたになり、最終的に脱落して傷になります。傷が治癒すると正常な皮膚が出てきますが、イボが残っている場合は2週間に1回のペースで同様の治療を続けます。
冷凍凝固療法は高い効果が見込めることと、体へのダメージが少ないことがメリットです。強い副作用が出るくらい強く当てた方が、結果としてイボの治りは良い場合が多いです。治療後は当日から入浴が可能で、ばんそうこうやガーゼで保護する必要もありません。足の裏や爪のまわりのイボは治りにくいことも多く、数十回の治療を必要とすることもあります。治療を続けても治りが悪い場合は、別の治療法に切り替えたり、ほかの治療法と併用することも検討します。いずれの方法でも液体窒素をあてる強さや時間は、イボができている部位・大きさ・厚さ・形状によって微調整をしています。

疣贅にはほかにもさまざまな治療法があり、いくつかの方法を組み合わせておこなうこともあります。患者様の背景や疣贅のタイプや大きさ、数、発症部位などを考慮したうえで相談しながら治療をおこなっていきます。

どの治療法でも1回で完治することは少なく、複数回の治療(通院)が必要になることが多いです。根気よく治療に臨むことが大切です。

電気焼灼法

電気でイボを焼き切る方法です。

モノクロロ酢酸(トリクロロ酢酸)を用いた治療

強い酸性の薬品でイボの組織を腐食させ、壊死させます。痛みが少ないのがメリットです。冷凍凝固療法自体が痛くて続けにくい・改善に乏しい方は、行うことができます。できるだけ痛みや恐怖心が少なく治療を続けられるように配慮させて頂きます。

サリチル酸軟こう・貼付剤による治療

塗り薬や貼り薬でイボをふやけさせ、いずれ取れるのを待つ治療です。

ヨクイニン内服による治療

内服の漢方薬ハトムギの成分であるヨクイニンを服用することで免疫力を高めていぼの改善をはかります。即効性はありませんが、頻繁に通院できない患者様に向いています。